こんにちは。
グラフィックファシリテーター🄬やまざきゆにこです。

13期に入りました。12年前の2009年11月11日「いいねーいいねー」の日を選んで法人化したとき、いつも絵筆を動かしながら念じている「Unify(1つに)なあれ」という想いを込めて、社名を株式会社ユニファイナアレと決めました。

社員の気持ちが見えなくて会社全体がモヤモヤしていた1年

昨年から今日までを振り返ると、在宅ワークが当たり前になって、同じ組織の仲間なのに、どこかみんなの気持ちはバラバラになってしまっているような、そんな危機感をモヤモヤ抱くクライアントさまと共に走ってきた、そんな1年でした。

コロナ前の「1つになあれ」という場は、どちらかというと、ネガネガがとてもハッキリしてました。縦割り組織で1つになれないギスギス議論の場や、利害関係が絡まるドロドロな場や、思い描いている未来がバラバラで1つになれないプロジェクトなど。共通するのは、それぞれ強い想いや主張があったからこそのネガ状態。わたしの口癖も「ネガネガドロドロギスギス喜んで~♪絵筆を持って駆けつけまーす」でした。でも、この1年はちょっと違う。

ここ1年はなんとも危なっかしいフワフワモヤモヤ感。強いネガがあるわけでもなく、強いポジがあるわけでもない。モヤモヤ。現場や、カスタマーが、どんなネガティブな感情を抱えているか、経営層も、リーダー層も、新しい価値を探索する担当者も、研修の事務局も、つかみきれず、直接聞くこともためらって、ソワソワ、ヨソヨソしい感じ。そして、二言目には、サーベイ、データ、サーベイ、データ、、、。

表面的には問題ないように見えるけれど、じつは目に見えない水面下ではすでに、気持ちは一人二人と離れていってしまっているような、そんな危うさをなんとか「1つになあれ」と繋ぎ留めた、そんなソワソワ感すらありました。気づいたら、最近の私の口癖も変わってました。「とっとと、モヤモヤ吐き出して、みんなで共有しましょう!とっとと、先に進むために」。

完全オンライン。ハイブリッド。いや、絶対対面で。

ちなみに、この1年で、「今こそリアルで集まらないと!」という場から「全員がオンラインで参加するワークショップ」や「リアルとオンラインで参加するハイブリッド型ワークショップ」という形まで、さまざまな場を経験させて頂きました。

特に今年5~9月の緊急事態宣言下、トータル11回、総参加人数200人超のオンラインでのワークショップでは、リアルにすっかり戻ってしまった今こそ、忘れずにここに書き留めておきたい、数々の貴重な経験をさせていただきました。(1回の参加人数は20~30人、1回4~6時間)グラフィックファシリテーションを導入さえしなければ、事務局のみなさんもこんな苦労もなかったでしょうにと思うことばかり。どんな制約があっても「リアルに負けない」「あえてリアルで集まれたからこそ」の心の深いつながりを生み出すことに挑戦できたことは、事務局のみなさんのおかげです。本当に心から感謝申し上げたいです。

「ネガを安全に楽しく吐き出し切ってもらう」ことが大前提のグラフィックファシリテーションでは、3〜4人の少人数で、メンバーを入れ替えながら対話を重ねていく「ワールド・カフェ・ダイアログ」という手法が欠かせません。且つ、対話をしながらその想いを付箋に書き留めてもらうことが、ネガを止めるためにも、わたしが複数のグループの発言を絵巻物にするためにも、欠かせません。

しかも、とにかく一人一人に「本当の声」を語ってもらわないと問題解決できないわけですが、そもそも、グラフィックファシリテーショッンが呼ばれるプロジェクトや組織の多くは、普段「みんな発言しない」とか「想いは共有してない」とか「愚痴や不満を言えるほど親しくない」といった関係性。そんなみなさんが、果たして本当の気持ちを書き出してくれるのか。

普段なら広い会議室で他のテーブルの笑い声とか聞こえたりして、こんな心配はしないけど、閉ざされたブレイクアウトルームでは空気が違う。リアルでも、あの手この手で、カッコつけず、かしこまらず、素直に感じたままに話してもらうための仕掛けをしているのですが、それをオンラインでどう実現するか。

みんなの気持ちが一斉に見えるオンラインホワイトボード

今回救われた1つがオンラインホワイトボードでした。これまで通りのワールド・カフェ・ダイアログのワークショップができたのは、オンラインホワイトボードの「みんなが一斉に付箋に書き込める」という機能のおかげ。「まずは黙って5分一斉にみんなで付箋に書き出す」ことで、声の大きい小さいに関係なく対等に公平に心の声を扱えます。

Instaにあげた動画もご覧ください。みなさんが一斉に書き込んでいる過程を見ているだけで、みんなが積極的に発言しようとしてくれている感じが伝わってくると思います。

動画、ぜひ見てほしい→Instagram

最初は最初の一文字が書き出されるまで事務局一同皆、内心ドキドキでした。グラフィックファシリテーションが呼ばれる現場の多くは、「会議で発言する人が限られる」「みんな、おとなしい」「声の大きな人だけで進む・決まる」といった課題感のある場。それがこうしてスムーズに書き出されたのは、各ルームに事務局の方たちがついて全力でサポートしてくれたおかげです。

みんなの本音が見える、見える、見えてくる。わたしはここに書き出される言葉を読んで絵巻物にしていくのですが、文字が現れるびに、安心安全な場さえあれば、みんな吐き出したいことがあるんだ。なんとかしたいから、モヤモヤしている。こんな前向きで健全なネガ(違和感や問題意識)は、やっぱり共有しないとねと確信します。

経営層やリーダーの皆さんが、次の打ち手に本当の意味で確信を持てるのも、結局は「未来が描ける(見える)」ことよりも、「みんなの気持ちが見えた」ときなのではないかと思います。「メンバーが何を考えているのか」よく見えないと思ったら、ためらわず聞いたほうが早いです。

4~5人の会議なら、一人一人に「モヤモヤしていること何かある?」と聞けばすむことですが、20人、30人といった組織やプロジェクトなら、「まずは黙って5分一斉にみんなで付箋に書き出す」ワークはオススメします。

わざわざワークショップを開催しなくても、ある方は、定例ミーティングの最初に5分に書き出してもらったことで「ゆにさん、若手の考えを聞けてプロジェクトがもっとよくなりそうです」とのこと。モヤモヤは健全な違和感、問題意識です。それを声が大きい小さい関係なく「均等に公平に」引き出せるのもこの付箋ワークのよいところ。

みんなの心の中で思っていることが「見えてくる」この付箋の書き出しは、シンプルだけどすばらしいです。

カラフルで無限に模造紙が広がる『miro』で脳内の発想も自由になる

さまざまなオンラインホワイトボードを試して、実際、途中で変更したりしながら最終的に事務局にも参加者にも好評だったのが写真で紹介している『miro』。決め手は「付箋の色のカラフルさ」でした。あんなに操作性や機能を比較検討していたのに、さいごは

「ネガティブなことも楽しく吐き出せそう」
「普段の会議とは違う明るい感じがいい」
「emoji(絵文字)が使えるのもいい」

機能性より「楽しそう」が勝ちましたが、改めて参加者に与える色の効果はあなどれません。実際、グラフィックファシリテーションも最初は「絵があると楽しそう」と言われますが、当日、絵巻物を見た人たちの中には、私が塗りたくる絵の具の色に反応する方もめちゃくちゃ多い。「ゆにさん、この会社の雰囲気の黒、もっとドス黒く塗ってもいいですよ」とか「暗い色から明るくなってきたー」とか「このあったかい炎の色がいい」みたいな声はよく聞こえてきます。

グラフィックファシリテーター®やまざきゆにことして、『miro』を採用する最大の理由は「無限に広がる模造紙」であることです。これが本当にすばらしい。

多くはA4サイズのオンラインホワイトボードで、わたしにとっては窮屈すぎて絵筆がはみ出ちゃって苦しい。描く範囲が小さくなると、話してる中身も小さくまとまっちゃう感じもする。普段リアルでは左から右にどこまでも壁があれば好きなだけ描いていますが、本当は、「この話はもーーーっと上空に描きたいんだよな」とか「これはすごく地底深くある想いとして描きたい」と、四方八方3Dで描きたい。

それが「無限に広がる模造紙」のおかげで、「データサイエンス用語解説」のYouTube動画ものびのび四方八方に描けています。

普段の堅くなった思考をやわらかくしたいと思ったら、A4サイズに慣れている「パワポ思考」から、無限に広がる紙の上でカラフル・ファシリテーションしてみることお薦めします。思わぬ想いと想像力の翼が広がりますよ。

ICTと人の温かさが1つになれたから


…と、ここまでmiroのカラフルさや、付箋の使い方を語ってきましたが、最もオンラインワークショップを成功に導いたのは、各ブレイクアウトルームでサポートに入る事務局のみなさん一人一人の温かさのおかげでした。3~4人の参加者が初めましての状態であのブレイクアウトルームという閉じられた空間で、安心してネガを吐き出せたのは、やはりさいごは「人の温かさ」でした。

毎回試行錯誤と改良を重ね、準備・リハーサル・当日の運営で見せた事務局のチームワークと温かい気配りのおかげで、本当に感謝・深謝・多謝しかありません。

​​​​​​​下の写真は、2時間ほどの対話から描けた絵巻物の解説(グラフィックフィードバック)を私がしているところ。事務局の子がライブ配信をしてくれている様子です。30分はかかるので毎度、彼・彼女らの腕の疲れ具合が心配ですが、これも「人の温かさ」を実感する1シーンでした。

これからますます、出社か在宅か、リアルかバーチャルか、人間かロボットか、人間かAIか、みたいな議論が増えてくると思いますが、「出社も在宅も」「リアルもバーチャルも」「人間もロボットもAIも」いっしょに仲良く「1つになあれ」という想いを絵筆に込めて、みなさんと未来を描いていきたいと思います。

(余談)それにしても、良いことばかりではなく、、、

オンラインではわたしの作業も一変しました。

リアルな場にみなさんが集まれるときは、数あるテーブルをぐるぐる歩き回って、付箋の文字を盗み見し、みんなの対話を盗み聞きしては、壁に貼ってある模造紙のところに戻って、絵巻物を描いて、またみなさんのテーブルに戻って、、という作業を繰り返してきました。とにかく時間が無いので、壁に戻るときは小走りです。マスクするようになってからはゼエゼエハアハア汗のかき方も一人マラソン状態。

それが全員オンラインとなると、わたしと事務局の方たちだけが会議室に集まり、わたしは手元のipadで6~8テーブルの模造紙がすべてのぞけるようになり、これまでみたいにテーブルを走り回らなくてよくなりました。

ところが、楽になるかと思ったら大間違いでした。

これまでは物理的に拾いきれなかった付箋がすべて読めてしまうので、結果、やっぱり1時間のお昼休みも、ぶっ通し描き続けることになりました。新たなゼエゼエハアハア真冬でも汗だくで、今期もすべての言葉を拾って絵にしていきたいと思います。無駄な発言なんて、ひとつもないから。