「絵巻物」は完成した後も働きます。

仲間を「共感」で巻き込むために。


「絵巻物」は描いて終わりではなく、ワークショップ終了後はさらに働かせてください。以下に一部をご紹介しておきます。クライアントさまの活用例はさまざまです。その話し合い、その取り組みを、絵空事で終わらせないために、共感で仲間を一人二人とじわじわ巻き込んでいくために、絵巻物は仕舞い込まず擦り切れるまで使って頂いています。

  • 社内の廊下の壁、カフェスペースの壁に実物の絵巻物を貼り出されるクライアントさまは多いです。やはり実物のインパクトが一番ということで、行政でも、市役所や役場の入り口近くの壁に、実物の絵巻物を貼り出しました。いずれもワークショップに参加しなかった社員や地域の人たちにまずは興味関心を持っていただく仕掛けです。自然に認知を広げ、受け入れてもらいやすい流れへ。知らない人同士が絵巻物を見ながら会話するきっかけにもなっています。
  • 会議の後、そのまま会議室の壁に絵巻物を貼り出しておいて、その後、会議室を使う人たちにも見てもらうクライアントさまもいらっしゃいます。モヤモヤネガネガな絵巻物を見てもらって、共感者を増やし、共通の問題意識から社内浸透を図っています。
  • 未来の利用シーンのアイデアをたくさん描いたプロジェクトでは、その絵巻物(模造紙)をメンバーで実際にハサミで切って、似た絵を分類してネーミングをつけ、未来の新しいカテゴリーを創出しました。
  • ある研修会社さまは、研修中の気づきや成果が描けたその絵巻物をその場でデジカメで撮影し、即、プリンターでA4出力。研修を終えて帰る参加者にその場で配布しました。帰りの電車で読み返してもらいながら、研修で得た学びや気づきを日常業務に戻って実践することを忘れないでいてもらうために。
  • ある音楽ワークショップの主催者は、3日間のワークショップで描けた絵巻物を、手のひらサイズの冊子に印刷し、後日、参加者に送付しました。全国から集まった参加者がワークショップでの学びを持ち帰りまた地元へ一人帰っていく彼らを日々勇気づけたい、学びを実践してもらいという想いから、常にカバンに入れて持ち歩けるサイズにされました。
  • 長期プロジェクトでは、定例ミーティングが始まる前に壁に絵巻物を貼り出し堂々巡りの議論を防止したり、新しいメンバーが加入したときにはプロジェクトの想いや歴史、ゴールなど文脈を共有することに活用していただいています。
  • 毎回、参加者の皆さんには各自、自由にスマホで撮影して絵巻物を持ち帰ってもらっています。ある人は組織のメンバーに見せて語り、ある人は飲み会で仲間に見せて語り合っています。絵巻物をタタキ台に自ら語ることで、共感者を増やし巻き込んでいます。



「絵巻物」がなぜ「巻き込める」のか。


「伝わらない」「腹落ちしていない」「浸透しない」「メンバーの心は動かない」という課題を抱えている場合、「ポジティブで前向きな結果・結論」だけを一方的に伝えられていることがほとんどです。絵でいうと「完成された綺麗な一枚絵」を渡された状態。受け取った側は、そのほとんどが決定事項なので受け身になるしかありません。「情報の共有」はされているけれど「感情の共有」がされていません。



「雑で途中で不完全な」絵巻物だからこそ

ツッコミどころ満載。後から人が参加する余地がある、巻き込める。




一方、弊社の絵巻物は「完成された綺麗な一枚絵」ではありません。モヤモヤネガネガな暗い色でいっぱいの「雑で途中で不完全な絵巻物」です。でも、だからこそ、ツッコミどころ満載な絵巻物は、見た人に「参加の余地」を与えています。実は多くの人たちが「途中から」巻き込まれたいんです。絵巻物を見た人たちが最初に笑って指をさして「そうそう!」と食い付いてきてくれる絵は、ポジティブで前向きな絵ではなく、間違いなく「ネガティブな絵」です。例えばそれは、ものすごく後ろ向きで辛そうな自分たちを表した絵です。弊社が絵巻物を「ネガポジ」の順番で描きたい最大の理由は、最短で力強く「共感」を得られるのが必ずといっていいほど、ポジではなく「ネガの絵」だからです。

そして、絵巻物の前で自然と皆が話したくなるのも絵巻物の強み。「この絵って何?」と聞かれたらチャンスです。伝えられることを黙って聞くという受け身とは真逆の、自ら興味をもって近寄ってきてくれた人と「共感」から会話が始められる楽しさを実感してください。伝えたい側も、準備せず、自分がしゃべりたいように喋る。そうして絵巻物はタタキ台となって本当の「伝わる」ストーリーテリングの効果を発揮していきます。

ちなみに「絵巻物」は決して完成しません。本気で未来をカタチにしたいという実行力が生まれてきたら、もうその絵巻物の中にあるモヤモヤを晴らして、さらにワクワクするモヤモヤが見えてくるからです。絵巻物はみなさんをつなぐ踏み台、タタキ台。

絵巻物の前半に描けてくるネガティブで暗くモヤモヤした絵が意味すること、それは、だれもが感じていた違和感、問題意識、危機感です。その暗い絵を見て「このままでいいのか」「もっとなんとかならないのか」という「ネガティブな感情」の共感なくして、みんなのハートを駆り立てる明るい未来は描けてきません。それに間違いなく「ネガが同じ」仲間と未来へ進もうとするチームのほうが、単にポジ(ビジョンや施策)を共有したチームよりも、ずっと力強く、且つ、どんな問題にも柔軟に一人一人が自律・自走していきます。絵巻物はぜひ、みなさんの想いをつなぐタタキ台として擦り切れるまで活用して頂ければ幸いです。